『全国賃貸住宅新聞』 2010.10.04 第945号
M&Aによる事業領域拡大が寄与
上場企業の成長戦略
2007年の名証2部に上場以来、営業利益ともに好調な桧家住宅(埼玉県久喜市)。2010年12月期には、売上高284億円(前年同期218億4000万円)、営業利益15億円(同期10億5100万円)を見込む。期初計画を上回って現在推移しており、前期に記録した過去最高益更新が確実視されている。
その1つの要因が事業領域の拡大だ。
「相乗効果が期待できる事業であれば積極的にM&Aをすすめていく」という近藤社長の考えのもと、昨年7月に戸建賃貸を手がけるランデックスを子会社化。注文住宅を主軸とする桧家住宅との木造ちいう共通点から、技術的なノウハウや資材におけるスケールメリットhが見込める。
「アパートやマンションの供給過剰が顕在化する中、戸建賃貸のニーズはまだまだあると感じていた」
1棟あたり812万円、20坪から建築可能なランデックスの戸建賃貸商品「プライムアセット」の販売数は、昨年対比倍増の100棟を視野にとらえている。桧家住宅と取引がある金融機関からの地主紹介により約20棟を受注。また、同社が全国60カ所以上に展開する注文住宅展示場の来場者に対し、所有する敷地内に持家と賃貸物件の併用型としてプライムアセットを提案出来ていることが寄与している。今後は地主との接点を持つ地域の管理会社を組織化し首都圏を中心にさらなる販売拡大を狙う。賃貸仲介事業にも取り組み、入居希望者の声を吸い上げて地主・家主に向けて提案できる体制を整えていく構えだ。
昨年には高質ウレタン素材の断熱材を生産・販売する日本アクアを傘下に収め、桧家住宅グループが提案する注文住宅・戸建分譲の「省エネECOハウス化」を推進し始めた。高断熱・高気密の発泡断熱材「アクアフォーム」を標準仕様とし、快適な住空間を実現する商品づくりを追求している。
「景気減衰の影響から銀行融資がつきづらく、コストを抑えたいというニーズが強い」
注文住宅事業では時代の潮流に沿った低価格の企画型商品が支持を集めている。2008年には、32坪1500万円からの外見とカラーの組み合わせが選べる「スマートワン」、09年には35坪1800万円からの設計に自由度を加えた「Gコンセプト」と立て続けに新商品を開発した。アクアフォームが導入されることで冷暖房費の削減に寄与し、購入者は月々の経費も抑えることが可能になる。この2年間で、同社の主軸商品だった完全オーダーの「hjスタイル」を企画型商品が受注数で上回るまでに急進した。前述した2種類の企画型商品は契約から引き渡しまでの期間が80日と、オーダー制に比べて1ヶ月以上短く利益率向上にもつながる。
1~8月の同社全体の受注数は昨年に比べ5割増と好調で、今期の目標は1000棟を見据える。第2四半期累計期間での営業利益は初の黒字を計上。企画商品による工期短縮、受注数増加が黒字化を実現させた。もともと、完成は下期偏重だったが「早いタイミングで利益計上できるよう工期の短縮化に取り組んできたことが実を結びつつある」と近藤社長は手応えを感じている。
義父でもある現会長・黒須新次郎氏の思いにひかれて9年前に入社。昨年4月、創業者の黒須氏から経営を託された近藤社長は、先代が築きあげた会社の成長に向け鼻息は荒い。「利益をともなった拡大を維持し、5年以内には純資産100億円を目指します」