全国賃貸住宅新聞 2011.02.28 第965号
桧家住宅
桧家住宅(埼玉県久喜市)は、2007年の名証2部上場以降
戸建賃貸住宅販売のランデックス(現:株式会社桧家ランデックス)
断熱材メーカーの日本アクアを傘下に収め順調に業績を拡大している。09年に経営を継承した近藤社長が語った。
殖産住宅の下請け工務店からスタート
亀岡 記者時代にはずいぶん住宅業界を取材したものです。御社は注文住宅が主力との事ですが、ルーツはどこにあるのでしょうか。
近藤 創業者で現会長の黒須新治郎が工務店ではたらいており、殖産住宅の下請け会社をしていました。
亀岡 殖産住宅の創業者である故・東郷民安氏にはよく取材に行ったものです。東郷氏はとても研究熱心な方で、軸組み工法を考案して日本のトップメーカーにまでなった人物でした。家系をさかのぼると提督・東郷平八郎元師、画家の故・東郷青児氏と同じ鹿児島の東郷家出身だそうで、民安氏は学者のながれをくむ次男家に生まれたそうです。
近藤 当社の主流商品である木造軸組み工法は殖産住宅をモデルにしたものです。東郷氏の話は会長から伺っていました。
亀岡 社長はお若いので御存じないかもしれませんが、かっては住宅事業というのはクレーム産業だったのです。ミサワホームの創業者・三澤千代治氏は苦労が絶えなかったと言っていました。雨漏れなどがあるたびに手土産を持参して施主のもとを訪問していたそうです。日本の住宅業界を成長させた東郷氏や積水ハウスの故・田鍋健氏なども同様です。
近藤 昭和63年の創業以来、注文住宅事業を中心に展開してきました。現在も、木造住宅で安く住宅を提供することに力を注いでいます。
亀岡 家は一生の買い物だから、良いものが欲しい。でも、景気の先行きが不透明な時代だから、安いに越したことはないというのが消費者の心理でしょう。最近は住宅の価格がだいぶ下がってきていますからね。競争が厳しいのでは。
近藤 2年ほど前に比べ、予算は10%ほど下がっていると感じています。以前は完全オーダー制で40坪・2,200万円からの注文住宅「hjスタイル」という商品が当社の主力でしたが、最近は設備や間取りなどのプランを統一した企画型の商品が売れています。
亀岡 企画型とはどの様な商品なのですか。
近藤 デザインや仕様などが画一的な商品ではなく、購入者が部分的に選べる要素を盛り込んでいる住宅です。たとえば2008年に発売した32坪・1,500万円台からの「スマートワン」という商品は、外観とカラーの組み合わせは自由に選ぶことが出来ます。翌年には設計に自由度を加えた35坪・1,800万円の「Gコンセプト」という新商品も開発し、今では注文住宅の受注の6割が企画商品です。
亀岡 1から設計する場合に比べれば、受注から引き渡しまでの期間を短縮できるので、住宅会社側にとっても効率的なわけですね。
近藤 オーダー制の「hjスタイル」が契約から引き渡しまで120日を要していたのに対し、80日程度まで縮まったので、利益の底上げにも寄与しています。
2007年の上場後戸建賃貸の企業買収
亀岡 さて、最近は賃貸住宅の建築にも積極的だとのことですが、参入したきっかけは。
近藤 2008年に木造戸建賃貸商品を販売するランデックスを傘下におさめた事がきっかけです。07年に上場して資金調達が可能になったことから、相乗効果の見込める企業としてM&Aしました。木造と言う共通点があるので、子会社により技術的なノウハウや資材におけるスケールメリットも生まれました。
亀岡 商品の売れ行きはどうですか。
近藤 ランデックスが販売する戸建賃貸「プライムアセット」の年間受注件数は前年から50%以上増加し144棟になりました。1棟あたり812万円、20㎡からとオーナーにとっても低額で投資できる商品です。全国60カ所以上に展開する注文住宅展示場の来場者に対し、所有する敷地内に持家と賃貸物件の併用型として商品展開しているのが奏巧しています。
亀岡 賃貸住宅というと、収益性を重視したワンルームなどの単身者向けが主流でしたが、最近はファミリー世帯向けのものが増えてきていますよね。
近藤 「プライムアセット」は3LDKタイプの企画型商品ですが、間仕切りを移動させて2LDKに間取変更できます。敷地・形状に合わせた100通りのプランを取りそろえています。
亀岡 営業はどの様にしているのですか。
近藤 当社だけでは限界があるため、現在は首都圏での販路拡大に向け、地主と接点を持つ地場の管理会社のネットワーク化を進めているところです。入居希望者の声を吸い上げることもできましし、地主・家主にむけて商品を提案していければと考えています。
亀岡 他にも買収されたのですか。
近藤 2年前には硬熱ウレタン素材を生産・販売する日本アクアを傘下に収めました。高断熱・高気密の発泡断熱材「アクアフォーム」を当社の注文住宅と戸建分譲で標準仕様とし、エコを意識した商品づくりを追求しています。アクアフォームは冷暖房費の削減効果がありますので、入居者は光熱費を抑えられるというメリットがあります。
会長の娘と結婚し保険業界から転身
亀岡 業績はどうですか。
近藤 2010年度の営業利益が23億5,000万円と2期連続で過去最高益を更新しました。初期計画では15億円を予想しており、大幅に上回ることができました。今後も当社の成長が見込める事業であれば積極的にM&Aを進めていく考えです。
亀岡 経営お方は順調なようですね。ところで、社長はもともと住宅業界に携わっていたのですか。
近藤 以前は保険会社に勤務していました。私の妻が会長の娘にあたり、10年前の結婚を機に入社しました。義父の「上場するんだ」という強い思いに引かれ住宅業界に身を投じました。
亀岡 上場したからといって満足してはいけませんよ。事業を成功させるには3つの要素が必要です。「組織を作るのがうまい」「借金をするのがうまい」「名前を売るのがうまい」と言うことです。
近藤 取材対応などを含めIR活動を積極的に行なっていくつもりです。
亀岡 近藤社長と御社の名前が全国的に知れ渡ることを楽しみにしています。