『住宅新報』2008.5.13　第3064号

戸建て賃貸が各地で活況を呈している。今春からFC展開を始めたランデックスでは、独自工法を売りに現場見学会を開催したほか、ケイアイスター不動産では多彩なプランをそろえた新商品を開発するなど、競争が過熱する中、各社とも差別化策を打ち出して広範にアピールしている。最近の動向を取材した。

神奈川県鎌倉市　GWに6連棟の構造見学会
オーナーと業者ら35組

戸建て賃貸住宅のFC事業を展開しているランデックス（名古屋市）はゴールデンウィークに、戸建て賃貸商品「プライムアセット」2棟の完成物件と建設中の連棟式6棟の構造躯体を公開する見学会を神奈川県鎌倉市で開催した。5月3日から同6日の集客数は個人客17組、住宅・不動産業者18組の計35組で、そのうちプラン依頼は業者から1件、オーナーから5件、一般から3件あった。同社では「すでに賃貸経営をしているオーナーを帯同する業者が5社あり、管理顧客に戸建て賃貸住宅をあっせんする環境ができてきていることを裏付ける結果となった」と分析している。

立地は、横須賀線北鎌倉駅徒歩12分、湘南モノレール富士見町駅徒歩12分の住宅地に位置する。
2棟現場の席地面積は約180㎡で、連棟式6棟の現場は同約480㎡。両現場間は直線距離で約100ｍ。いずれもオーナーは同じで、以前は2階建てのワンルームアパート（総戸数約10戸と約24戸）としていたが、築20年と老朽化も進み、空室が目立ってきたことから建て替えを決めた。

オーナーは、同物件周辺に複数棟のアパートやマンションを保有しているが、戸建賃貸を建築するのは初めて。きっかけは管理会社の紹介で、希少性による差別化で利回りを見込めるとして、同社の商品に決めた。
建築費用は2棟現場が約2500万円、連棟式6棟が約7900万円。通常かかる外構、屋外排水工事、敷地調査、地盤調査などに加えて、６棟連棟物件は緩やかな傾斜地に建つことから、高低差による特殊基礎工事費、地盤改良費、解体費などが含まれている。工事期間は２棟物件が３ヶ月半で、６連棟は５ヶ月半の予定だ。
２棟物件の月額家賃は、周辺相場より２割程度高い約18万と強気だが、入居はすぐに決まると見ている。
見学会の期間中、車で通り掛った30代の夫婦は、車越しに「分譲住宅だと思った」と声をかけ、その場で営業担当者の名刺を受け取り説明を受けていた。周辺住民からも注目を集めている。

施工を期にFC加盟　構造の信頼性など評価

プライムアセットは、構造用集成材の接合部に専用接合金物を使った独自の工法「プライムウッド工法」を採用。外壁下地には構造用パネルを配置し、耐震性を高めている。 今回施工を担当した1級建築士事務所「もっく」（神奈川県鎌倉市）の伊勢田裕之社長は、「構造の信頼性や精度が高い」ことを評価。実際の施工をきっかけに同FCに加盟した。

もっくは、大手住宅会社の下請けやリフォーム工事を手掛けてきたが、今後は「プライムアセット」の受注活動1本に業務を絞る方針。「大手ハウスメーカーにも対応できる競争力のある商品だ」（伊勢田社長）と判断した。原材料価格が高騰し、住宅部材の価格が安定しない中で、同FCでは住宅部材を一括で仕入れたうえで加盟店に供給する仕組みを取っていることから、「規定通りに受注すれば、利益を出せることも魅力」（同）と話す。「大手の下請けといえども、今後永続的に安定した仕事を得られるかどうかは分らない」とも話、積極的な営業戦略へと大きく舵（かじ）を切った。

初年度は10棟の受注を目標としている。 同FCは08年3月から本格的に加盟店の募集を始め、現在約10社が加盟。累計受注棟数は62棟に達している（FC立ち上げ準備期間の受注も含む） 野村勝久専務取締役東京支社長は、「東京23区内での受注の動きが出てきているのが最近の特徴」と話し、「加盟店は近く20社になり、受注も10棟ほど増える予定」と勢いの良さを強調する。